疫学研究に関する倫理指針(平成14年6月17日,文部科学省,厚生労働省)によれば、人体から採取された試料を用いない疫学研究の場合として、
ア |
既存資料等以外の情報に係る資料を用いる観察研究の場合 |
イ |
既存資料等のみを用いる観察研究の場合 |
の2つの場合をあげています。
前者について「研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の実施についての情報を公開し、及び研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにしなければならない。」とあります。
後者では「研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の実施についての情報を公開しなければならない。」と記載されています。
一方、この指針の前文には「この指針は(略)疫学研究の実施に当たり、研究対象者に対して説明し、同意を得ることを原則とする。また、疫学研究に極めて多様な形態があることに配慮して、この指針においては基本的な原則を示すにとどめており、研究者等が研究計画を立案し、その適否について倫理審査委員会が判断するに当たっては、この原則を踏まえつつ、個々の研究計画の内容等に応じて適切に判断することが求められる。」とあります。
以上のことより、トラウマレジストリーを行なうにあたり、個々の症例でインフォームドコンセントを得る必要は必ずしもないようですが、「症例登録をしていること」は知らせるべきだろうという意見は確かにその通りかと思われます。
そこでトラウマレジストリーを行なうにあたり、昭和大学病院の例を示します。まず一般的なお知らせとして病院玄関に院内掲示を行ない、同様の文面を入院時に手渡す病院案内書にも明文化します(疫学的研究に関する倫理指針の院内掲示等について)。 また、個々の患者又は患者の家族には「外傷に関する疫学的な研究に診療記録を使用することについてのお願い」と題する文面を渡し適宜説明をいたします。これにともなって承諾書を得るなどは全く行ないません。
これらについては昭和大学医学部倫理委員会にて”トラウマレジストリーに参加す るにあたり適切な対応である”という判断がありました。
トラウマレジストリーに参加される各施設は以上の事を参考にして倫理委員会や院内管理運営委員会他への対応等を考慮してください。
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